逆オイルショックが世界経済と日本株に与える影響とは?

逆オイルショックの原因

最近、「逆オイルショック」という言葉が注目を集めています。

1970年代に発生した「オイルショック」は原油価格高騰による経済混乱でしたが、今回はその逆、つまり急激な原油安による経済混乱が懸念されているのです。

以下、逆オイルショックの意味と日本株に与える影響を紹介します。

逆オイルショックの原因

逆オイルショックの原因

その発端は、長期的に上昇傾向を続けてきた原油価格が、2014年秋ごろから現在に至るまで大きく値を下げていることです。

原油安の背景にあるのは、基本的には中国を中心とする新興国の需要減と、米国が生産を進める新型石油「シェールオイル」の供給増です。

 

さらに、原油価格に絶対的な支配力をもっていたOPEC(石油輸出国機構)のなかでも足並みがそろわず、混乱が続いています。

例えば、財政に余裕があるサウジアラビアは、多少、原油価格が安くなっても生産を維持したほうがシェールオイルの生産を進める米国に顧客を奪われずに済むという考えを示しています。

その一方で、原油輸出に依存しているベネズエラなどは、価格の下落を避けたいため減産を主張しているのですが、産油国のパワーバランスからそうした要求は受け入れられていない状態です。

原油価格の下落は資源輸出国の経済にマイナスの影響を与えるので、通貨価値の下落を引き起こします。ロシアの通貨(ルーブル)の価値は対ドルでほぼ半値になりましたし、南米のブラジルでも通貨(レアル)が年初来12%以上も下落しました。

 

逆オイルショックのプラス面

逆オイルショックのプラス面

逆オイルショックは、実は1980年代にも発生しています。1970年代に2回のオイルショックが発生した後、原子力等の代替エネルギーの導入や省エネ技術の発達により、石油の需要が減少したことが主な理由です。

また、当時もOPEC加盟国の足並みがそろわず、生産調整がうまくできなかったことが、石油価格の急落につながりました。

原油安は原油輸入国の経済にとっては基本的にプラス要因と言えます。特に円安傾向が続き輸出が堅調な日本において、原油安は輸入価格の上昇という円安のデメリットを緩和してくれることから、「神風(かみかぜ)」になるとの見方も出ているほどです。

 

1980年代の逆オイルショックの時、日本はその直後にバブル景気(1986年12月~)に突入しました。

今回も1バレル=70ドル程度で原油価格が推移すれば、日本や欧州などの石油輸入国には、GDP(国内総生産)比で1~2%の景気浮揚効果が出ると試算するシンクタンクもあります。

OPECの中心国であるサウジアラビアは例え1バレル=20ドルまで下落したとしても、減産はOPEC加盟国の利益になるとは考えられないとの見解を示しており、今後とも原油価格が長期にわたって安値で推移する公算が高いとみられます。

以上のことから、G20等の場で主要国が話し合いの上「逆オイルショック」を防止するためのしっかりとした対策をとれば、今回の原油安の傾向は日本のみならず世界経済全般にとって、かつてのような長期的な好況の引き金になることもないとは言えません。

 

原油価格の推移を注視せよ!

原油価格の推移を注視せよ!

ただし、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする資源国が世界経済の重要な役割を担っていることも事実であり、今後さらに原油安が続き、資源国の経済が悪化するようなことになれば、世界経済にさらなる重大な悪影響を及ぼしかねません。

世界経済の先行き不透明感が広がれば、安全資産である円が買われ円高を招きやすいので、日経平均株価にはマイナスの影響を与えます。

いずれにしても、日本の株式に投資する人は特に今後の原油価格の推移を注視しておく必要がありそうです。