生命保険は掛け捨て型の保険と貯蓄型の保険に大きく別れます。低金利時代と言われてずいぶん経ちましたが、貯蓄型保険においても最近契約できる保険の利率はよくありません。
さらにマイナス金利政策までとられたら、貯蓄型保険は本当に入る価値があるか疑問視したくなるところですが、日本銀行は保険会社に配慮した政策転換も行っています。
貯蓄型の保険とは
掛け捨て型の保険は所定の状態にならなければ保険は一切おりません。一方、貯蓄型保険は支払った保険料が国債を中心に運用され、死亡時や満期時に戻ってきます。
終身保険や学資保険が貯蓄型保険の代表的な商品です。バブル時以前に契約した貯蓄型保険は、貯蓄できない所帯持ちの人には高利回りの良い金融商品でした。
かつては予定利率も1%以上あり運用に向いていました。アメリカに比べ株に手を出さない日本人が保険好きになる要因にもなっていました。
日銀のマイナス金利政策が仇に
日本銀行が政策金利を年々引き下げ、平成28年には日銀のマイナス金利政策も導入されました。マイナス金利といっても個人の預金金利や保険の予定利率がマイナスになるわけではありません。
マイナス金利政策とは、金融機関が日本銀行に預けている当座預金の金利をマイナスにするものです。
この政策により、金融機関が企業への貸し出しを増やし、景気を底上げすることを目的としています。
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個人の金利をマイナスにすると預金者の反感を買うので、そこまでする金融機関はありません。また保険の予定利率や住宅ローンの金利にしても、基準にするのは新発10年物国債の金利です。
これは契約者より得た保険料は責任準備金として積み立てますが、その主な運用先は国債であるからです。
とはいえ、日銀当座預金の金利がマイナスになったことで、金融機関が日銀当座預金から国債にシフトする傾向もあったので、国債金利が下がって保険の利率に影響が及ぶことにはなります。
保険料値上げや販売停止の嵐
国債の金利が下がると、貯蓄型保険の運用益が悪くなります。国債金利より高い予定利率で死亡満期時の保険金を払うと、保険会社の収支が苦しくなります。
新発10年物国債の利回りがマイナスになったこともあり、保険会社は収支改善のために、貯蓄型保険の保険料値上げという手に打って出ることになります。
それでも難しいという場合は、貯蓄型保険は販売停止にせざるを得ません。
特に一時払い終身保険の販売停止は、相続税の基礎控除引き上げに伴う有効な節税対策として期待されていただけに、必要としていた高齢者は困ったことになりました。
また、保険会社も国債だけでなく、社債や海外の公社債にもシフトしながら運用改善していくようになりました。
平成28年9月の政策転換は吉と出るか
外国の債券でも、為替の変動リスクをおさえないと元本割れすることもあります。安全運用となると大きくシフトするわけにもいきません。
平成28年9月20日・21日の日銀金融政策決定会合で、新発10年物国債の金利(長期金利)を0%に誘導するような政策に転換することを決めました。これは、長期金利がマイナスにまで下がることを防ごうとする意図があります。
このことにより、保険会社が国債に投資して運用益が出ないような事態は避けられるという観測がされましたが、海外でも誘導できた例が無く、実際にうまく行くかが不透明となっています。
この政策の成否により、貯蓄型保険に入る価値が出てくるかが変わってきます。保険にとっては転換点となる政策決定なので、金利の推移を見守っていきましょう。