健康保険の扶養に入らないと保険料負担が生じて損ということで、年収を扶養の範囲内に抑えて働いている方は多いと思います。
専業主婦に多く見られますが、健康保険の扶養対象は幅広いです。
親族のうちどこまでが扶養の対象者(法律上「被扶養者」と言います)なのか、扶養の範囲や受けられるサービスについて紹介します。
扶養の範囲って?
専業主婦が扶養になるかならないかという話が多いのですが、年金と違い健康保険の扶養は配偶者だけに限定されていません。
基礎年金をもらう権利は、基本的に国民年金保険料か厚生年金保険料を負担することが原則的な要件であり、過去の経緯から専業主婦は例外的に負担無しを認められているだけです。
公的な健康保険は国民に広く医療保険サービスを利用してもらうことを目的としています。
年金は多く払った人が多くもらえるシステムですが、健康保険はむしろ低所得者のほうが負担は少なくても厚くサービスを受けられるようなシステムになっています。
そのため、健康保険の扶養範囲は相当幅広くなっています。職場の健康保険に加入している人の配偶者・親・子・孫その他3親等内の親族、直系尊属であれば6親等まで含まれます。
6親等内の直系尊属・配偶者・子・孫・弟妹であれば、同一世帯じゃなくても生活費を援助していれば扶養にいれることはできます。その他の親族は、同一世帯に属するという要件があります。
扶養されている人のサービス
健康保険の代表的なサービスと言えば、自己負担割合が6歳以上で3割(6歳未満は2割)になったり、在宅医療のサービスも受けられたりすることですが、これは被扶養者も扶養に入っていれば受けられます。
また、死亡時には5万円程度の埋葬料、出産時には42万円程度の出産育児一時金が給付されます。
法律的には被扶養者に対するサービスは、家族療養費(自己負担3割のサービス)・家族出産育児一時金と異なる名前がついていますが、基本的には被保険者本人と同等のサービスです。
なお傷病手当金や出産手当金は会社員休業中の保障になるので、これは被扶養者には支給されません。パートタイムだけどこれらの保障が欲しいという場合は、勤務先の社会保険に加入したほうが良いということになります。
高額療養費制度の注意点
高額療養費は気をつけるべき点があります。ある月1ヵ月間において、1人の医療費自己負担額に上限を設けている制度ですが、この上限が被保険者の給与額に応じて変わります。
これは被保険者の治療でも被扶養者の治療でも関係がありません。被保険者が高収入であれば被扶養者の医療費上限額も高くなります。
ただし70歳〜74歳の高齢者が被保険者か被扶養者にいる場合は、世帯合算による判定の制度も利用できます。70歳〜74歳世帯員の合算医療費に15,000円〜44,400円の上限(現役並み所得者であればもう少し高くなります)が設けられており、医療費の自己負担をかなり下げることができます。
上限が15,000円になるのは、被保険者も被扶養者も住民税の課税所得が0円という要件があります。この要件を満たさない場合は被保険者の収入や所得のみで判定され上限額が上昇します。
意外と知られていない死亡リスク
扶養の恩恵は大きいですが、それだけに被保険者の死が重たい負担をもたらす危険性もあります。
被保険者が亡くなれば埋葬料が支給された後は健康保険からは脱退になり、被扶養者は国民健康保険の負担が出てきます。
年収130万円未満ですので1人あたりの負担は年間10万円にはいかないでしょうが、妻だけでなく両親も子供もという感じで被扶養者の数が多いと負担が大きくなります。このようになった場合のリスクは考えておきましょう。