一般企業に勤めていない自営業者や、経営者向けに保険を提供する保険会社は結構多くあります。
今回は経営者向けの保険について、社会保険の内容とあわせて注意したいポイントを紹介します。
経営者保険で事業の運転資金を保障できる
経営者保険のメリットとしては、死亡・病気など経営者に万が一のことがあっても、事業の運転資金を確保することです。
経営者が急きょ変わることで業績や資金繰りの悪化を引き起こすこともあるので、取引先への代金支払や従業員への給与支払を保険金でまかなうことができ、法令違反や信用失墜を防ぐことができます。
その他、退職を見越して60歳などのタイミングで満期になる保険を掛けておけば退職金に充当することができます。
貯蓄性保険は経費にならない!?
経営者保険で支払う保険料が全額経費(税務上損金)になるとは限らない点は注意が必要です。
掛け捨て型保険の保険料に関しては戻ってくる保障がないため全額経費となりますが、貯蓄性保険の場合は、保険積立金として預貯金のような形で資産計上することになります。
養老保険のように掛け捨てと貯蓄性の両者を併せ持つ性格の保険では、資産計上する部分と経費処理する部分が混在します。
両者の数字がわかるように、保険会社が計算して契約者側に通知するのが一般的です。資産計上する部分に関しては節税効果が出ませんので注意してください。
節税対策のつもりが資金繰りを悪化させることも
企業においては決算が完了すると、それに基づいて法人税等を納めることになります。決算期末になる前に多額の納税が予想される場合、節税対策として経営者保険への加入が考えられます。
高い節税効果を出すためには、決算期末頃に年払で支払い、かつ全額が年度内の経費になるような形の保険に加入することですが、保険の加入目的を節税対策とすることは問題もあります。
保険は加入期間が長期にわたるものが多いので、コンスタントに利益が出ることが見込まれる場合は長期にわたり節税になりますが、業績が不安定な場合は巨額の赤字要因にもなりえます。
また、法人税等の実効税率は35%〜40%程度です。法人税等を35万円節税するとすれば、100万円程度の保険料を年間で支払うことになります。
差引65万円の出費が増加しますので、無理な節税は資金繰りを悪化させる恐れがあります。
さらに、契約時には全額が年度内の経費になるような場合でも、将来的には税法の改正や国税庁からの新たな通達で、全額が年度内の経費にはならないことも起こりえます。
社会保険料をうまく活用する
法人の代表者は労災保険に原則加入できないものの、社会保険には加入することになります。
社会保険料は本人負担と会社負担あわせて給与のおよそ3割にもなりますが、業績が不安定でもコントロールしやすいです。税金対策としては、社会保険料の変動を考えたほうがいいでしょう。
代表者の報酬は主に税制上の問題で年1回決算後に変えるのが一般的です。役員報酬の改定額を決めるためには、利益予想をたてて考えましょう。
このような考え方から、社会保険も経営者保険として活用できると言えます。
これが個人事業主のような自営業者になると、雇っている従業員は社会保険に加入できるものの、個人事業主本人は社会保険には加入できません。
しかし、加入できるようにする方法はあります。実質自営業者1人であっても、法人を設立する「法人成り」というものです。
零細企業には代表者1人の法人もたくさんあり、法人成りは節税対策として活用されることが多いのですが、経営者自身の保障を厚くするというメリットももたらします。
国民年金だけでは老後は月6万円程度しかもらえず、万が一休業することになった場合、社会保険からの傷病手当金も出ません。
法人化すると各種手続きが煩雑になった上に会社法の縛りを受けますので、個人事業主が実際に行う場合は保険以外の観点もよく考えましょう。