小説「悪の教典」で知っている方も多い小説家の貴志祐介ですが、悪の教典の他にも背筋の凍る様な小説がたくさんあります。
今回は貴志祐介のおすすめ小説を簡単なあらすじと共に、個人的なランキング形式で紹介しています。
目次
貴志祐介のおすすめ小説 5位「天使の囀り」
「天使の囀り(さえずり)」はアマゾンに出た日本の調査隊が、ある事件から呪いにかかってしまい次々とおかしな死を遂げ、その呪いで恋人を失った女性が謎を解き明かすお話です。
なにが怖いかといえば、ずばり死の遂げ方です。その呪いの特徴は生理的に嫌いだったものが、無性に好きになってしまうどころか重度の偏愛をしてしまうことです。
例えば蜘蛛嫌いだった人がこれを患うと、口に入れることも厭わないほど蜘蛛を愛してしまうというものです。
呪いにかかったら最後、尋常ではない最期を迎えるでしょう。
終盤に主人公の女性が敵のアジトに踏み入れますが、ある場所に集められた亡骸たちの描写が圧巻。読後も脳裏から離れることはないかと思います。
貴志祐介のおすすめ小説 4位「黒い家」
「黒い家」は保険会社で働く男が、ある事件をきっかけに保険詐欺を図る女に命を狙われる話です。
貴志祐介本人は作家になる以前は保険会社に務めていたので、そこでの経験がストーリーに活かされています。
映画化もされましたが、活字で体験するとまた違った印象を受けます。サイコホラー特有のページをめくらざるをえない緊張感が本にはあります。
主人公の男が「黒い家」である死体を見つけますが、殺される様子は描かれていないので、凄惨な死に様を想像せずにはいられません。敵役の女のサイコパス感が半端ではなく、日常に潜む狂気をまざまざと見せつける怪作となっています。
貴志祐介のおすすめ小説 3位「硝子のハンマー」
「硝子のハンマー」はある介護サービス会社の社長が密室の中で死を遂げ、女性弁護士と防犯コンサルタントの男が謎を解く話です。物語は二部構成となっています。
前半は主人公の弁護士の視点で事件を追っていき、後半は犯人の視点から事件の発端から終わりまでが綴られています。
緻密な構成は特筆に価しますが、なにより目を見張るべきはトリックの鮮やかさでしょう。周到に準備された殺人トリックは思わず舌を巻くほどです。
貴志祐介のおすすめ小説 2位「クリムゾンの迷宮」
「クリムゾンの迷宮」は荒涼とした谷底で目を覚ました男がそこに至る記憶を失ったまま、殺し合いのサバイバルゲームに巻き込まれる話です。
同じような作品に高見広春のバトルロワイヤルが挙げられますが、謎を解いていく快感や恐怖に戦慄する展開はクリムゾンの迷宮に軍配が上がります。
本当に追い詰められると人間は、人間であることをやめることができるというのを感じさせられ、その変化の様子を主人公と生き抜くことで体験することができます。
気がつけば手に汗を握りながら、ページをめくっているでしょう。
貴志祐介のおすすめ小説 1位「新世界より」
貴志祐介の作品は一気に読むことができるストーリー性が魅力ですが、文庫本だと上中下巻あわせて1000ページを超える本作の様な作品も例外ではありません。
舞台は近未来の日本ですが、生活様式は現代より後退しています。そこで生きる人々は超能力が使えて、バケネズミなど異形の化け物たちと共生しています。
主人公たちは生まれ育った町の整然さや奇妙な習慣に疑問を持ちながら、ある事件をきっかけに暴いてはいけない秘密に触れてしまいます。
ここまでさらっと書いてもなんのことか伝わりませんが、SF(サイエンスフィクション)の世界観を短文で伝えるのは至難の技です。
アニメ化もされているので、ネットなどで第一話だけ視聴してから読みかかると作品の世界観に入りやすいかもしれません。(アニメの方は重厚なストーリーや人物の心情を描写し切れてないので、全話の視聴はおすすめしません)
SFものとして括りましたが、ここまであげたランキングの作品(上からサスペンス、ホラー、ミステリー、サバイバル)を見れば分かるとおり、大長編の本作をひとつのジャンルにあてはめるのは正しくないと言えます。
旧世界の歴史を知った途端に広がっていく怒涛の展開と、徐々に明かされる新世界の秘密に目を離すことはできません。
私にとって寝食を忘れて読みふけることができた、数少ない作品の一つです。