様々な著者の「時代小説」を簡単なあらすじと共にランキング形式で紹介します。
どの小説もその時代背景が分かりやすく、どんな方でも楽しめる小説です。
5位:「のぼうの城」・和田竜
「のぼうの城」は野村萬斎主演で映画にもなった話題作でした。
時代は安土桃山時代、埼玉県の行田市にある忍城で城代となっていた成田長親は、家臣や領民にでくのぼうだから「のぼう様」とあだ名をつけられるほど頼りない人物。
その頼りないのぼう様が守る忍城に、天下統一目前の豊臣秀吉の軍勢が攻めてくることになり、のぼう様、家臣、領民が一丸となって城を守りぬく物語です。
見所は秀吉の2万の軍勢に対し3千ほどのわずかな軍勢で籠城をし、いかに戦い抜いたかが軸となっています。
登場人物に個性があり全員魅力的で、現代口調で語られるので親しみやすく、歴史小説が苦手な方にもオススメな作品です。
4位:「戦国残酷物語」・南條範夫
戦国時代の残酷な物語が短編集となって収められています。
十年前の復讐のため、主君を捕残酷な方法でいたぶり続ける男の物語や、領主の影武者となり喜び勇んで向かった先に待ち受ける悲劇など6編がおさめられています。
人を欺き陥れ、そしてまた自分も復讐される救いのない結末のみの6編です。かなり古い小説ですが、南條範夫の残酷物語はシリーズ化された人気小説です。
3位:「花闇」・皆川博子
江戸時代から明治時代にかけて活躍し名女形といわれた実在の人物、歌舞伎役者、三世沢村田之助の物語です。
美しさと役者としての才能に恵まれた田之助は役者としての名声とは裏腹に、その傲慢で自分勝手な性格で仲間から敬遠されていました。
そんな田之助を、羨望とも憎しみともつかない感情で見つめ続ける男の目線を通して田之助の人生が語られていきます。
ある日、田之助が舞台で足を怪我したことから悲劇が始まります。
足の怪我が壊疽(えそ)を起こしてついには両足切断、その後両手も切断されてしまいます。
しかし田之助は舞台に立ち続け、客席から両手両足があるように見せる工夫を凝らして、役者であり続けます。
不幸を不幸とも思わない意思の強さと舞台への情熱を持つ田之助ですが、観客が自分の芸を見に来ているのか手足を失った姿を見にきているのかに悩む時がきます。
一人の役者としての壮絶な人生を描いた力作です。
2位:「燃えよ剣」・司馬遼太郎
言わずと知れた司馬遼太郎の傑作の「燃えよ剣」です。
新撰組副長土方歳三の人生を、まだ多摩の田舎で武士を夢みていた頃から五稜郭で命を落とすまでをじっくり描いています。
近藤勇、沖田総司、仲間たちの人物像も丁寧に描かれているので、頭の中にその映像が浮かんで、まるで大河ドラマを見ているようです。
若く希望に燃えていた頃から新撰組の最盛期、そして時代の波に逆らえず滅びて行く姿に最後は涙が止まりませんでした。
戦の勝ち負けが人の人生の価値を決めるものではない、人として男として生き抜いた見事な人生だったと感じます。
1位:「真田太平記」・池波正太郎
戦国時代から江戸時代初期にかけての、真田昌幸、真田信之、真田信繁(幸村)親子の人生を描いた傑作時代小説です。
真田家の主君である武田勝頼が、織田信長に滅ぼされたところから物語は始まります。
信州・上州の小さな領主であるが上に、謀略・知略に長けた昌幸が忍びの者を使いながら生き残りをかけて闘う姿が小気味よく、また兄弟でありながら全く違う個性をもった信之、幸村のキャラクターが生き生きとしていて物語に引き込まれていきます。
戦国武将同士の駆け引きや親子、兄弟の微妙な関係、そして小国の領主であった真田一族がまわりの大国の軍勢と渡り合う姿は、文句なくカッコよく書かれていて胸がすっとします。
関ヶ原の戦いから最後の大阪夏の陣の幸村の最後にかけては、死へ向かっていく幸村と徳川方として生き残ることしかなかった兄・信之の心情を思う時胸が苦しくなります。
全巻を通して一読してほしいエンターテイメント小説です。