婚姻届けを出さず内縁関係で夫婦生活の事実婚、これだと結婚している夫婦が使える制度が使えないのでは?と不安に感じる方もいるかと思います。
しかし、これは制度によりケースバイケースです。扶養になれるのかどうかについて詳しく解説します。
健康保険の扶養にすることは可能
いわゆる「130万円の壁」に関わりますが、健康保険では法律上でも被扶養者の要件として事実婚による内縁の配偶者も認めています。
法律でも「届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」と明記されています。
同じ世帯であり同一生計で養っていると証明できれば、健康保険のサービスを無料で利用できます。内縁関係でも民法上は扶養の義務はあるとされるので、利用できるものは無駄にしないようにしましょう。
年金の第3号被保険者にもなれるが・・・分割も可能
厚生年金は社会保険として健康保険とワンセットですが、こちらも内縁の配偶者でいわゆる第3号被保険者となり、年金保険料の負担は無くなるのでしょうか?
国民年金の法令で「健康保険の扶養の扱いを勘案して決める」とあるので、第3号被保険者になれます。内縁関係を解消しない限りは60歳まで保険料を負担することなく、65歳から老齢基礎年金を受け取れます。
また、内縁関係を解消したとしても、3号分割で年金を分割することも可能です。
事実婚でのケースは少ないとされますが、第3号被保険者の資格を喪失する手続きをとれば3号分割の手続きをとれます。
所得税・住民税申告では出来ない
所得税・住民税を計算する上で配偶者控除の対象になるかは、パート主婦が関心を持つ大きな問題ですが、こちらは残念ながら事実婚では対象外になります。
所得税法や地方税法に明記はされていませんが、国税庁による所得税法の基本通達で明確に否定されています。
いわゆる「103万円の壁」で年間収入を103万円以内に抑えて働くやり方は、内縁の配偶者では通用しません。ただし、この壁は本人の所得税が0円になるというもう1つの意味もあり、これは配偶者控除の対象になるならないは関係ありません。
また、住民税非課税の基準は年収103万円でなく100万円なので注意が必要です。
婚姻届を出していれば100万円を超えていても103万円以内であれば配偶者控除の対象ですが、内縁の場合で課税されない範囲を目指すなら100万円以内に抑えておくほうがいいです。
自営業者との事実婚では扶養のメリットなし
通常扶養を意識する場合は税と保険両方のメリットを意識しますが、事実婚の場合は社会保険だけ考慮することになります。しかし、夫が社会保険に加入しているサラリーマンでなく自営業者であった場合はどうでしょうか?
この場合、残念ながら健康保険や年金においても扶養の対象にはなれません。国民健康保険や国民年金においては、扶養の概念は無いからです。
税・保険とも扶養のメリットはありませんが、この場合のメリットをあえて考えてみます。まずお手伝いするのであれば、通常の家族従業員であれば専従者となります。
夫の個人事業で家族に給与を支払っていても、青色申告で専従者の届出をしていなければ給与を事業経費とすることができません。
しかし、事実婚では税法上の家族従業員にはあたりませんので、内縁の妻への給与は届出せずに事業経費として扱うことができます。
よそのパートで働くのであれば、いわゆる106万円の壁は意識せず社会保険に加入することも考えられます。
年収106万円を少し超える程度であれば、国民年金より厚生年金のほうが保険料負担は少なく、また将来の年金額が老齢基礎年金+老齢厚生年金となり保障が厚くなります。