女流作家の中でも独特の雰囲気を持ち、個性たっぷりのオーラ漂う5人から恋愛小説5作品を厳選しました。
簡単なあらすじと共にランキング形式で紹介します。
5位:『センセイの鞄』・川上弘美
内田百閒の影響を受けているという川上弘美は基本的に恋愛小説家です。幻と現実、あの世とこの世の間を描いた作品が多くあります。
その中でこの作品は現実的というか、この国のどこかで実際に起きた話としても不思議ではないシチュエーションです。
3歳の離れた高校時代の恩師「センセイ」と教え子「ツキコさん」の恋愛物語です。微妙に揺れる女心が繊細に描写されています。
4位:『八日目の蝉』・角田光代
角田光代の印象を漢字ひと文字で表わすならば「活」です。初期の作品から読んでいるからか、若々しい躍動感あふれるイメージが定着しています。
そのせいか角田氏はシリアスに描いているのかもしれない作品も、どこか楽天的に解釈してしまいます。
この作品もドラマ化、映画化されていて「観ながら泣いてしまったよ」という友人の感想を聞いて「?」と首をかしげる始末でした。
角田作品ではさんざん笑わされてきた口なので、一皮も二皮もむけたこの作家に関しては、今までと違った読み方が要求されるのかと悩まされた作品です。
3位:『薬指の標本』・小川洋子
小川洋子が瀬戸内海をモデルに「海」を描いても、なぜかそこが「地中海」になってしまいます。
場所や人物の設定が抽象的で、読む人によって好きなように脚色できるのです。この作品は、フランス人監督によって映画化されました。
作品全体にアンニュイな雰囲気がちりばめられていて、原作がそのまま踏襲されていました。
場所や人を特定しないことで、読む人の想像力をより掻き立てるという効果が得られていると思います。
読んだ人の数だけ「ただひとつだけの物語」が立ち上がってくる作品です。
2位:『がらくた』・ 江國香織
おそらく良い意味でのナルシスト好みのする作家ではないかと思います。
透明な空気に包まれた静かな雰囲気で、恋愛も仕事も常にクールにオシャレに淡々とこなしていく主人公たちが描かれています。
ファッション的絵空事にどっぷり浸りたい、そんな時におすすめの江國香織の小説です。
この作品と設定は違うのですが、フランソワーズ・サガンの『悲しみよこんにちは』を彷彿とさせます。
恋人を慕うように夫に恋い焦がれている女。しかし、その夫には外に恋人がいます。
静かな嫉妬や、やりきれない時のさりげない気持ちの流し方、邪気のなさ、一見風変りな登場人物など、下世話な言い方ですと「じたばたしない」作品です。
1位:『白河夜船』・吉本ばなな
題名になっている「白河夜船」とは「何も気づかないくらい熟睡していた」という意味ですが、主人公の寺子は「よく眠る人」という設定になっています。
主人公以外にもう一人、眠り続けている人物が登場します。それは、ヘタな運転をして事故を起こし、植物人間になってしまったという愛人の奥さんです。
それから、自殺をしてしまった友人も出てきます(文字通り出てきます)。友人は生前、疲れた人の添い寝をするという変わった仕事をしていました。
お客さんの負の想いを吸い取っていくうちに病んでしまい、自ら命を絶ってしまった。すでにこの設定だけで、良くわからない世界だと思います。
この作家の世界観は、人生を決して否定しないというものです。「もっと、したたかに生きろ!」というメッセージを発信しているのです。
闇の世界に引きずられていきそうな魂をこちらの世界に呼び戻すという、まるで「イタコ」のような役割を果たしているといえるでしょう。
疲弊しすぎた人に癒しと希望を与える作品です。