生命保険会社の死亡保険や個人年金には、一時金で一度だけ大きな金額でもらう方法と、分割で毎月・毎年など定期的にもらう方法(いわゆる年金形式)を選択できるものがあります。
一時金でもらうほうが節税になるよく言われていますが、なぜ節税になるのか詳しく紹介します。
退職金は年金形式と一時金形式が選択できる?
退職金というとリタイアした時に一括でもらうイメージがありますが、企業年金制度がある会社の退職金は分割(年金形式)でもらえることもあります。
生命保険会社の個人年金保険の場合は逆に年金形式でもらうのが一般的ですが、一時金でもらうことも可能です。
こういったお金は一時金形式の方が節税になりますが、それはなぜなのか計算事例と共に見てみましょう。
退職金の所得計算
40年会社勤めをして、退職金を一時金形式で2,000万円もらうケースで考えます。
退職金の所得は退職所得になりますが、退職金から差し引く退職所得控除額は800万円+70万円×(勤続年数−20年)という計算をします。
計算結果は2,200万円となり、退職金の額を上回ることになります。この場合は退職所得0となり、所得税も住民税もかかりません。
一方で退職金を年210万円ずつ10年で受け取るものとすると、企業年金の場合は公的年金等に係る雑所得となります。
公的年金とあわせて年金収入を計算し、この年金収入に応じて公的年金等控除額が決まります。
60代前半のように公的年金をもらわない場合でも、退職年金で年210万円では雑所得が0になることはありません。発生する税額は税率によっても変わりますが、一時金形式でもらうほうが節税になると言えます。
個人年金の所得計算
個人年金の保険料を総額800万円支払い、一時金を920万円もらうケースを考えます。この場合は一時所得に該当します。
一時所得の計算式は(収入−経費−50万円)÷2となり、50万円引いてさらに1/2になるのが特徴です。
収入=920万円、経費=800万円(総額保険料)より一時所得は35万円となり、税率が所得税と住民税あわせて20%とすれば、税額は7万円となります。
一方で100万円ずつ10年間受け取るものとすると、この場合は「その他の雑所得」となり下記のように計算されます。
その他の雑所得は収入−経費で計算されますが、個人年金の場合経費は、保険料総額×受取年金額÷総受取年金額となるので、800万円×100万円÷1,000万円=80万円と計算されます。
よって年間の雑所得は100万円−80万円=20万円となり、税率は同じく20%とすれば、税額は年4万円となります。10年間で累計40万円支払うことになります。
なのでこちらも一時金形式でもらったほうが節税になります。
まとめ
税金対策と言う意味であれば、間違いなく一時金形式のほうが得です。
しかし、上記の事例を見ればわかるように年金形式の方がもらう総額が多くなります。これは分割してもらう期間にわたって、運用益分だけプラスしているからです。
一時金形式と年金形式の税金差額を運用益で上回るようであれば、お金の出入りという観点からは年金形式のほうが得です。
例えば、先ほど紹介した個人年金の計算事例では、年金形式のほうが税額は33万円多くなりますが、受取総額は80万円多くなり、差引47万円「年金形式」の方がお得です。
ただし予定利率の低い近年の保険ではそれほど運用益がいいとは言えないので、一概に年金形式のほうが多くなるとも言いきれません。
また、お金の使い方によってもどちらがいいか変わってきます。
手元にお金があると一気に使いこむような性格の方であれば、税金が多くなっても年金形式でもらったほうが、資金繰りとしてはプラスになる可能性もあります。
税金の多い少ないだけでなく、自分の性格も踏まえて検討してみてください。