平成28年のマイナンバー制度開始に伴い、勤務先や契約している保険会社にマイナンバーの提出を要請された方は多いかと思います。
勤務先には社会保険や税務のために提出するのですが、生命保険会社にも提出となると保険とマイナンバーの現在の関係、そして今後考えられる方向性を理解しておくことが大切です。
マイナンバーの利用目的は
マイナンバーは社会保障・税・災害対策の分野に限定して利用されることで始まった制度です。
平成28年からは、雇用保険関係手続(加入・脱退・給付金請求)・労災保険給付申請手続・国民健康保険の諸手続に使用されます。
税務においても平成28年分から利用対象となっておりますが、平成28年の所得が確定し税務署や市区町村に報告するのは平成29年1月以降ですので、平成28年内での行政手続きの利用は限定的です。
協会けんぽや健康保険組合に関しては、平成29年以降の手続きより使用されます。
日本年金機構に関しては平成27年に個人情報流出事件を起こしたため、情報管理の対応策が求められており、具体的な開始時期がまだ決まっていない状況です。
病歴を管理すると誤解されている方もいらっしゃいますが、これは今後の検討課題であり、マイナンバーとは別番号での管理となる可能性が高いです。
生命保険会社はマイナンバーを収集するのか?
マイナンバーの利用目的に社会保障はありますが、民間保険は明示されていません。
生命保険に利用できるのであれば、保険契約の情報と結びつけてマイナンバーで保険料や保険金の支払情報がわかりそうなものですが、このようなことは想定されていません。
生命保険会社が契約者にマイナンバーの提供をお願いするのは税務で利用するからです。
生命保険会社は100万円を超える保険金を支払った場合、支払調書を作成し税務署に提出しています。支払調書には支払った相手の個人情報や金額が記載されます。
税務署は支払調書を活用し、保険金を所得として申告しない人に修正申告を勧めてきました。この支払調書に、平成28年分より保険金をもらった人のマイナンバーを記載することになりました。
マイナンバーに保険金の情報を紐づけることで、税務署が申告漏れの発見を効率化できることが見込まれています。
公的保険と民間保険の連動はされるのか?
生命保険会社は税務(脱税防止)のために契約者に対してマイナンバーを提供を求めていますが、病歴などの個人情報を知るために利用するわけではないということを理解してもらい、契約者に安心してもらう目的があります。
しかし他方では、マイナンバーを提供しているのだから、医療保険給付の手続きがもう少し省略化できないか?という考え方もあります。
マイナンバーが病歴と紐づく情報であれば、医療機関へ手続きしたことで保険会社が参照する仕組みになることが考えられますが、今のところそこまでは想定されていません。
ただしマイナンバーを商店街のポイントに活用しようという発想など、当初想定されていない方向での利用も検討されていますので、可能性としてはあります。
民間保険はFintechで健康状態を収集する動き
現在の民間保険会社でも、病歴とは言わないまでも健康情報を(情報技術を駆使する形で)収集し、保険料に反映しようという動きがあります。
具体的には腕時計状のウェアラブル端末で歩数など健康状態を測定し、その情報を元に生命保険の保険料を増減しようというものです。
これはITを活用して金融サービスを生みだす「Fintech」の1つで、先端技術のような形で注目されています。
この動きはリアルタイムな個人の健康情報を保険会社が管理していくとも言え、医療情報の番号管理にも応用される可能性もあります。
保険のFintechはマイナンバーのような個人情報管理の観点からも、今後の動向に注目していきたいものです。