読みやすい夏目漱石の小説ベスト5!(彼岸過迄、それから、夢十夜、三四郎、坊っちゃん)

夏目漱石の本を読んだことが無い方が読むならコレ!という小説を簡単なあらすじと共にランキング形式で紹介しています。

どれも面白くて読みやすい本なので、興味のある方は是非読んでみてください。

夏目漱石のおすすめ小説 5位「彼岸過迄」

夏目漱石の彼岸過迄
「彼岸過迄(ひがんすぎまで)」は夏目漱石の多くの小説と同じく新聞紙上で連載されました。

「元日から始めて、彼岸過迄書く予定だから」という理由でこのタイトルにしたのだそうです。漱石らしいスタイルですね。

 

主人公である敬太郎という若者には現代の人から見ても共感できるところがあります。空想が大好きで、できれば洞窟を冒険したり探偵みたいな仕事がしたいと夢想しているのです。

なかなか就職しないあたりは「明治の時代から、そういう人はいるんだなぁ」という意外な発見があるのではないでしょうか。

この種の厭世的な人物には、次に紹介する作品でもスポットが当たります。

夏目漱石のおすすめ小説 4位「それから」

夏目漱石のそれから

2015年4月から朝日新聞で再掲載されているようですね。

『三四郎』『門』と合わせて、新聞連載された三部作として知られているうちの2番目に当たります。

 

主人公は高等遊民の代助です。高等遊民というのは、家が金持ちなので就職しないで資産で暮らしている人のことを言います。

先ほどの『彼岸過迄』と同じように、漱石の小説には「働きたくない人」がよく出てきます。

作中で代助がたびたび親父さんの家へお金をせびりにいくのですが、そのやり取りは現代でも不甲斐ない思いをしたことのある人なら、きっと経験のあるものです。

また、旧友の平岡に対して料理屋で「なぜ自分が働かないのか」について弁舌を奮う様は必見です。

夏目漱石のおすすめ小説 3位「夢十夜」

夏目漱石の夢十夜

このランキングで紹介する他の4作とは違って「夢十夜」は小品(短編)集です。

漱石は日本文学史上では余裕派などと位置づけられているのですが、すごく夢想的なところがあり「夢十夜」には顕著に現れています。

最初に読むときは「なんだこりゃ」と思ってしまうかもしれません。しかし、短いからこそ凄く読みやすい小説ですし、ファンタジー的な雰囲気に満ち満ちているので、たとえばカフカあたりの小説と比較すると「夢の中で見ているような」感覚には似通っている部分もあって、「これをあの時代の日本で書いた漱石はすごいな」と思わされます。

夏目漱石のおすすめ小説 2位「三四郎」

夏目漱石の三四郎

東京帝国大学(現在の東京大学)に入学するため熊本から上京した若者の物語です。正直に言うと、最初の方はちょっと読みにくいかもしれません。

新聞紙上で連載し始めの段階で、まだ先の展開が見えていなかったのではないかと感じさせます。

とはいえ、ヒロインの美禰子が登場すると一気に読みやすく、おもしろくなります。やっぱり恋愛ですね、これが古今を問わず読み手をひきつけてやまない王道です。

引っ越しの手伝いをしに行った先で出会うシーンや縁日で2人だけではぐれてしまう場面、そして非常に印象的なヒロインの台詞とともに幕を終える結末など、見どころがたくさんあります。

 

個人的には三四郎が大学の図書館で手に取ったヘーゲルの本に書いてある、大学生の落書きがおもしろくて好きです。

何と書いてあるのか、ぜひ確かめてみてください。

夏目漱石のおすすめ小説 1位「坊っちゃん」

夏目漱石の坊っちゃん

「漱石でも読んでみようと思うんだけど、どれがいいかな?」

と相談されたなら断トツでオススメしたいのが『坊っちゃん』です。夏目漱石の代表作といえばコレと『我輩は猫である』だと思います。

ただし『我輩は猫である』は個人的に少ししんどいなと感じています。有名な冒頭から始まる第1章はとてもおもしろいのですが、2章以降がけっこう長いのです。

その点『坊っちゃん』は面白く、しかも最初から最後まで軽々読むことができます。その秘密は、1人称で語られる軽妙なストーリーにあります。なんでも漱石はこれを一週間ばかりで一気に書き上げたといいます。その勢いが生き生きと文体に乗って、読み手を引っ張っていきます。

 

ところで、学校で『こころ』は勉強しても『坊っちゃん』は読みませんでしたよね?

おそらく、教育委員会的に好ましくない作品だからだと思います。というのは、夏目漱石は作中で思いっきり教師を揶揄し、あげつらっているんですね。

おそらく現代でも中学生あたりがこれを読んだら、実際の先生を「赤シャツ」だの「野だいこ」だの馬鹿にして呼ぶことでしょう。なので学校の教科書には載せられないんじゃないかと勝手に思っています。

 

しかし、読書としての『坊っちゃん』の魅力は、まさにこの点にあります。

気風のいい主人公が小人物や悪辣な連中をばんばん批判し、しかしあまりにも実直すぎて煙たがられ、生徒からも馬鹿にされる。それでも屈託なく生きていく姿が、読んでいて実に痛快なのです。

古典的なストーリー展開にのっとっているので、素直に読むことができます。言ってみれば明治時代のライトノベルのようなものです。

漱石を読もうと思うのであれば、ぜひ『坊っちゃん』から入ってみてください。