昨今、医療現場で豊富に使われているのが「心臓カテーテル」です。
心臓カテーテル検査はなんといっても、手術なしで動いている心臓を直に検査できるというのが大きな魅力です。
ご存じの方もいるとは思いますが、ざっと説明すると心臓カテーテルとはプラスチックの細い管のことで、皮膚をちょっと切開することにより、カテーテルを体内に挿入して血管を通して心臓まで通します。
管なのでちょっと採血をしたり、逆にカテーテルから造影剤を入れることで動いている心臓の様子が分かるんです。
このように、現代医学では切っても切れないカテーテル手術ですが、開発にはある医師の壮絶なドラマがありました。
一人の医師の好奇心から
カテーテルを開発した医師の名前はフォルスマンといいます。ドイツ人です。
彼は「心臓を直接見てみたい」という野心をもっていたようで、安全に心臓を調べる方法を医学校時代から探し求めていました。
二人のフランス人医師がウマに細い管を通し、心臓まで通した実験をフォルスマンは人間に行ってみたいと思いつきました。
しかし、イヌやウマでは実験に成功したものの、人間の体ではどうなるかは分かりません。
人体実験を行わなければならないのですが、それには危険がつきまといます。
危険を冒して実験をする必要があるが、実験が失敗してしまうと他人を傷つけかねません。
その矛盾を解決するためのアイデアを、フォルスマンは持っていました。彼は「自分を実験動物にした」のです。
カテーテル手術の問題がない事が証明された
もちろん、周囲の人間は反対しました。しかし、それでも彼はカテーテル手術への情熱を抑えられなかったのです。
彼は自らを検体とし、人体実験を決行しました。看護師を騙して自分の体にカテーテルを挿入し、そしてその証拠となるX線写真を撮影しました。
彼の体に異常はなく、カテーテルを心臓に挿入しても問題ないと言うことが確かめられました。
しかし、彼の発明はドイツの医学界では受け入れられず、その後フォルスマンはカテーテルの研究を許されませんでした。
しかし、彼の研究はアメリカへと受け継がれ、アメリカ人医師によって完成されました。
カテーテルの研究が評価され、ノーベル賞の受賞に輝いたのは二人のアメリカ人医師とフォルスマンでした。